ブロックチェーン × スマホアプリ


―BlockRecordとは何ですか?

河﨑:BlockRecordというのは、「誰でも簡単にスマートフォンを使って事実を証明することのできる、証明アプリ」です。

―具体的には何ができるアプリなのですか?

河﨑:例えば、インターネット上で自分が撮った写真であるということを証明するのは結構難しいんですね。近年ではAI等の発展もあり、デジタルデータを書き換えて、誰のものであるかを変えてしまうということができるようになっています。これをブロックチェーン技術を使って、誰がその著作権者なのか、あるいはそのデータが改竄されていないということを、証明することができる仕組みというのがBlockRecordです。

事実・記録・証明


―どのようなものがBlockRecordによって証明できますか?

河﨑:先ほど例に挙げたような、著作権について使うことができます。また、例えば事件や事故に遭遇したときに、その状態を記録することができます。誰が、いつ、どこでそのような事件や事故を目撃したのか、あるいは巻き込まれたのかということを、改竄のできない形で証拠として保全して、そのことの証明書を出すことができます。

―証明の仕組みはどのようなものですか?

一般的には証明をするときに、国によって公証役場という制度があり、事実実験公正証書など、公的に証明書を取得する仕組みが存在します。けれども、これは実際にはほとんど使われていません。これをブロックチェーンを用いた証明の仕組み、改竄を防止する仕組みを用いることによって、誰でも手軽にスマートフォンで使えるようにできないか、というのが我々のやろうとしていることです。

 

弁護士がつくった、事実証明アプリ


―河﨑さんの本業である弁護士業とは、どのような関係があるのでしょうか?

河﨑:そうですね。私は弁護士として10年ほど活動する中で、訴訟業務にも取り組んでいます。訴訟の勝ち負けを最終的に決めるのは何かというと、「証拠」です。証拠がなければ、どんなに正しいと思ってる主張でも裁判所は認めてはくれません。そのため、訴訟において証拠とは決定的な意味を持ちます。しかし、その証拠を作るということ、つまり、実際にあったことをちゃんと裁判所に知ってもらうというのは、非常にハードルが高いんです。証拠作りに役立つアプリケーションを作ることができないかというのが、BlockRecordの開発に取り組んだきっかけですね。

―ブロックチェーンは、そうした目的に合致したものだったということですか?

河﨑:分散型のデータベースであるブロックチェーンは、その中に書き込まれたことは改竄されないということを担保できる仕組みです。これは、証拠の保全という目的には非常に合致したテクノロジーだと思っています。

―ブロックチェーンのような分散型台帳技術を用いたとしても、防ぐことのできない嘘というのはありますか?

河﨑:はい。もともと意図的な嘘を書き込むこと自体をブロックチェーンが防げるわけではありません。あくまで、書き込まれたものが誰によって書き込まれたか、あるいは書き込まれた時点から改竄されていないことを、ブロックチェーンによって証明することができます。

公証から共証へ


―BlockRecordの開発を通じて目指す、世界像というものはありますか?

河﨑:「公」・「共」という言葉があります。「公」というのは、「おおやけ」という意味で、「共」というのは、「ともに」という意味です。これまで証明とは、国家権力というものを背景にした「公」の色彩を帯びたもので、公証人や公証役場が中心でした。しかし、技術の進歩によって、「共」・「ともに」の部分、つまり国家のような単一の権力者ではなく市民が連携をして、何が事実であって改竄されていないのか、ということを担保する仕組みを構築しうるのではないかと考えました。このアプリが、その一つのきっかけとなって欲しいと思っています。

 

スマートコントラクトの社会へ


―BlockRecordの機能アップデートなど、今後の開発の展開はどうなりますか?

河﨑:一つのポイントは、「秘密鍵」だと考えています。ブロックチェーン上では、その人がその人であるということのアイデンティティそのものが、秘密鍵という形で表現されます。このアプリでも秘密鍵が導入されており、アプリを利用することによって、皆さんのスマホの中に固有の秘密鍵が生成されます。これによって、「ウォレット」の形で仮想通貨(暗号資産)を保持したり、それを誰かに対して送金したり、受け取ったりということができるようになります。これにブロックチェーンの改竄困難性の特徴を組み合わせると、「スマートコントラクト」という、契約をブロックチェーン上で締結をし、その契約に基づいて財貨の移転や権利の移転を自動的に実現できる社会が、遠からず到来するのではないかと考えています。このアプリは、そういったスマートコントラクトの社会へ向けた第一歩です。 皆さん、ぜひご利用ください。

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河﨑 健一郎(Kenichiro Kawasaki)

株式会社ケンタウロスワークス代表取締役CEO。アクセンチュア東京オフィスを経て弁護士に。早稲田リーガルコモンズ法律事務所の代表も務める。AI及びブロックチェーンテクノロジーの法実務への適用を支援するため当社を設立。経営全般を担当。